よくある質問・ご意見【其の一】

海外取引・貿易実務の業務において、よく尋ねられる質問・ご意見をいくつかご紹介したいと思います。今回は第一弾として、できるだけ初歩的なものを集めました。とはいえ基本は大切ですので、実務経験の長い方もご参考にしてみてください。

特に実務経験の浅い方、これから業務に携わろうとされている方のお役に立つことができましたら幸いです。

見積り、受発注、輸出入に必要な書類に決まったひな型はありますか?

特に決まっていません。

しかしながら、それぞれの書類の役割を理解したうえで必要となる情報をしっかり明記するよう心がけましょう。
「見積書」には契約の基になるうえで必要な取引条件等をしっかり明記する必要がありますね。
「注文書」「受注確認書」には、見積書やその後の交渉に基づき最終的な決済条件や納期、仕様等を明記する必要があります。
輸出入の際に作成する通関書類、たとえばINVOICEには価格や品目をはじめ税関に申告に必要な情報を、PACKING LISTには何が何個、どのような荷姿で梱包されているかを分かりやすく明記します。
SHIPPING INSTRUCTIONにはB/L等の基になる情報を明記します。

ライセンス制の貿易ソフトをご使用の場合には凡そ特有の決まったフォーマットがあるかと思いますが、Excel等でユーザー独自に作成されている場合には必要に応じてひな型や項目を改良してみましょう。

コレポン、書類の作成に英語以外の外国語を使用してもいいですか?

日常的なコレポンは英語以外の言語でも結構ですが、書類は英語で作成しましょう。

たとえば中国の取引先の担当者とコミュニケーションをとる際に、あなたが中国語をネイティブレベルで操ることができれば、スムースにコミュニケーションをとることができるでしょう。それは他の言語然り、コレポンにおいては問題ありません。

しかしながら、ICC, 国際商工会議所によって制定される”インコタームズ”(国際貿易取引条件)が定める貿易条件(EXW, FOB, CIF等)の解釈が英語で記載されているように、それに則って取引、輸出入が行われる場合、売主・買主の両方が英語で記載された解釈を理解することが求められます。

建値にインコタームズの記載は絶対ですか?

絶対ではありません。

必ずしもインコタームズが定める貿易条件に当てはめなくとも、売主・買主が双方に合意した条件を明記することができます。例えば、買主の要望により売主(荷主)側の指定場所への納品を希望する場合、”Total FCA, (named place of delivery)”などと明記しなくても、”Total delivery to the buyer’s designated place in (place)”など、文章にしてしまっても構いません。

とはいえ、前項に関連しますが取引条件としてインコタームズを明記しているのであれば、取引上のコスト・リスク負担範囲はインコタームズに則って契約されたものと考えられます。

業者によって提出を求められる書類が違うのですが

特に通関の際に求められる書類に戸惑われる方が多いようです。

『NVOCC(非船舶運行業者)とは?』の記事でも書きましたが、輸送業者・通関業者によって得意とする分野が異なり、取り扱う商材や業界によっても慣れ・不慣れがあります。それでも、DG, Dangerous Goods(危険品)に該当する品目の輸出入においては(M)SDS成分表等、通常貨物に比べて提出を求められる書類が多くなり、通常貨物においても非該当証明書パラメータシート等の提出を求められることもあります。

既に輸出或いは輸入の実績がある品目で、且つ実績のある業者であれば、新たに別の書類の提出を求められることは比較的少ないかと思います。

最も安全な決済方法は何ですか?

100% by telegraphic transfer upon ordering, つまり受注時に100%を電信送金で決済してもらうことです。全額の入金後に注文を手配することで、売主の代金回収リスクを予め回避することが可能です。

L/C決済も極めて有効ですが、細かい条件や不慣れな書類の提出が含まれている場合など、L/C決済に不慣れな方はまず客先に電信送金での決済を依頼しましょう。

疑問を持つことが業務レベルアップの鍵になります!

これらの些細な疑問は、実務経験者であれば誰もが一度は考えたことではないでしょうか。

「なぜそうなのか?」と考えることは理解を深めることにつながり、理解を深めようとするとするほど増々疑問が湧いてきます。今日はインターネットで知りたい情報をすぐに入手することができますので、信頼のできるウェブページや書籍から正しい知識を得、業務担当者としてどんどんレベルアップしていただきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。