海上コンテナの種類

港に近い地域や倉庫が並ぶ物流団地が近くにある地域では日常的に目にする機会の多い、船会社の名前や可愛らしいロゴ、カラフルなデザインが施されている海上コンテナ。この記事ではその種類についていくつかご紹介したいと思います。

一般的なコンテナ

コンテナと聞いてまずほとんどの人が想像する、普通のコンテナです。
業界では、Dry Container(ドライ・コンテナ)と呼ばれます。汎用コンテナ、GP, General Purposeと表記されることもあります。
「普通の」コンテナといっても、サイズ、高さに種類があり、外からは見えなくとも内側に様々な加工が施されている場合があります。

サイズ外寸(L x W x H)※ISO規格
20フィート6,058 x 2,438 x 2,591 mm
20フィート(背高)6,058 x 2,438 x 2,896 mm
40フィート12,192 x 2,438 x 2,591 mm
40フィート(背高)12,192 x 2,438 x 2,896 mm

20フィート、40フィートにはそれぞれ背高のものもあり、hi-cube(ハイキューブ)や現場に近い港湾ではそれぞれ「ハチロク」「クンロク」とも呼ばれることがあります。ハチロクというのは、8’6″、つまり8フィート6インチ、クンロクは、9’6″、つまり9フィート6インチを指します。

これらの背高コンテナには上記の画像のように注意書きがあったり、コンテナ上部にある三角マークと虎柄(橙色 x 黒色)のマークで容易に見分けることができます。

特殊なコンテナ

前項でご紹介したドライ・コンテナとは別に、輸送する品物・サイズ・形状・性質に応じて様々なコンテナがあります。

リーファ・コンテナとも呼ばれ、Refrigerated Container, Reefer Container, RFなどと表記されることもあります。
主な用途はご想像の通り、「(輸送品の)鮮度を保つ」ことです。野菜や果物をはじめとする生鮮食品や薬品、化成品、さらには精密機器や美術品の輸送に用いられることもあります。
内側に断熱材を使用しているためドライ・コンテナに比べると若干内寸は小さく(狭く)なってしまいますが、一般的には-30℃から+30℃の範囲、THERMO KING社などの強力な冷凍機によっては-60℃以下に冷やすものもあります。冷却・低温保管する対象の品物によって、また置き方によって温度ムラが出てしまう場合があります。

OT, Open Top Container, オープン・トップ = 天井が開けている、つまり天井がないコンテナのことを指します。このタイプの一番の特徴として、真上から吊るして荷役をすることが可能である点があげられます。また、サイズや高さが規格外の、いわゆるオーバーゲージ貨物の輸送に用いられることもあります。20フィートと40フィートの2種類があります。
オープン・トップ・コンテナはその名の通り、四方の壁面はそのまま、天井がない特殊仕様となっています。上に他のコンテナを積むことができないため、自社が使用するオープン・トップ・コンテナ + 1スペースの利用となります。インゲージ/オーバーゲージで海上運賃も変わってきます。

FR, Flat Rack Continer, フラット・ラック・コンテナは、前項のオープン・トップ・コンテナと違い、折りたたみ式のパネルを残し、左右側面の壁面を取っ払った仕様のコンテナとなります。こちらも20フィートと40フィートの2種類があり、ドライ・コンテナには収まらない大型貨物の輸送・保管に用いられます。FULL VOID(OW & OH)となります。
オープン・トップ・コンテナが上部からの荷役が可能なのに対し、フラット・ラック・コンテナは、上部・斜め・真横からの荷役が可能です。よって、長尺物・重量物・高さのある荷物(木材、鋼材等)を輸送するのに適しています。
壁面で守られていないため、荷役・輸送中のダメージに注意が必要です。

前々項、前項に続き、さらに四隅の柱と壁面を取っ払ってしまったコンテナが、Flat Bed Container, フラット・ベッド・コンテナ、プラットフォーム・コンテナになります。もはや、こんなので大丈夫!?と心配になってしまいますね。
とはいえ、この「床面だけ」になってしまったコンテナにも特有の役割があります。フラット・ラック・コンテナ同様に、重量物・長尺物の輸送に耐えられるよう強化されており、より重さ・幅・高さのある品物の輸送に用いられ、保管時には段積みして省スペースでの収納が可能な利点があります。輸送する品物のサイズによっては、フラット・ベッド・コンテナを連結して使用することもあります。
難点としては、輸送費が割り増しになってしまう点に加え、使用方法や輸送ルートが限られてしまうことがあります。

TN, Tank Container, タンク・コンテナは一般的に液体のバルク輸送に用いられるISO規格の特殊コンテナを指します。輸送する主な内容としては、食品原料、原酒、ガス類、石油化成品等が挙げられます。要は、液体や気体を運ぶ特殊コンテナのことですね。骨組みは20フィートのサイズで、高い強度と耐久性を備える繰り返し使用可能な特殊コンテナとなります。
ISO規格のタンク・コンテナの大きなメリットとして、大容量の液体・気体を、船・鉄道・陸の複合一貫輸送が可能な点が挙げられます。また、梱包材等が不要で低コスト且つ環境に優しい輸送方法であることもメリットです。
なお危険物を輸送する場合には、国際海上危険物規定(IMDG規定)により原則として充填率80%以上、95%以内に収めるよう定められています。

コンテナの応用

倉庫や物置はもとより、近年では内外装に手を入れそのままコンテナ式のホテルとして使われたり、同じサイズのコンテナを複数連結することでスペースを確保し、スポーツジム・音響・研究・培養・工業設備等、様々な施設としても活躍しているようです。
また近年特に注目されているのが、大きな自然災害があった場合などに被災地での一時的な仮住まいとして海上コンテナを利用することです。

いずれにしても、規格コンテナならではの輸送における優位性、確かな強度、汎用性が大きく評価されたものです。

コンテナの歴史

20世紀の最大の発明のひとつとも云われるコンテナ。輸送にコンテナが登場したのは1956年のアメリカに遡ります。
一つひとつの荷物を荷役することで莫大な時間と費用がかかっていた港湾事情に革命をもたらしたのが、当時陸運業者であったマルコム・マクリーンという人物。彼は海運に目をつけ、containerization =「コンテナで(荷物を)運ぶ」というアイディアを持ちます。

この六十数年の間、輸送する荷物に応じて様々なタイプのコンテナが開発・導入・改良され、今日の物流に大きく貢献したことは言うまでもありません。ちなみに世界最大のコンテナ生産国は中国で、世界の生産量の80%以上を占めていると言われています。中国はZPMCをはじめとする港湾クレーンの世界的シェアも物凄いです。

より深くコンテナの歴史や世界経済との関連性を知りたいという方は、マルク・レビンソン著 『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった(日経BP)』松田琢磨著『コンテナから読む世界経済 経済の血液はこの「箱」が運んでいる!(KADOKAWA)』を、ぜひご一読されることをお奨め致します!

まとめ

長くなりましたが、今後ますます海上コンテナが多様な業界・用途で活躍することを期待せざるを得ませんね!

輸送する荷物のサイズ・形状・性質に応じた様々な特殊コンテナをご紹介致しましたが、全ての業者がこれらの特殊コンテナを所有しているわけではなく、また常時使用な可能な状態であるとも限りませんので、使用の必要がある場合には事前に業者に問い合わせをし、確保してもらうことをお奨め致します。

少しでも皆さまのお役に立つことができましたら幸いです。